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視覚と触覚の相互作用 ─「さわれる」と「さわる」
「さわる」とは、触覚のみによって情報を得ることを指す。一方で「さわれる」とは、視覚に依拠して情報を認識している人に対して、触覚による補足的な情報が加わる状態を指す。前提として、点字はサイズに厳密な規定があるのに対し、墨字はサイズが可変である。 本研究は、「視覚で認識できる文字」が、必ずしも「触覚でもその輪郭を正確に認識できるわけではない」という体験を具現化しようとする試みである。提示したグラフィックでは、墨字(視覚)の輪郭を触覚表現の中に再構成し、視覚と触覚の間にある決定的な差異を示した。 さらに、このグラフィックを等倍(100%)から拡大することで、点字は「指で読む文字」としての身体的機能を失い、意味を持たない触覚的なノイズの中に埋没していく。こうした体験を通して、「視覚で文字を読むとは何か」という問いを、触覚との相互作用の中であらためて提起したい。 視覚と触覚が相互補完的に機能する情報伝達デザインの開発は、感覚の優位性を一方的に決めつけない「さわる」体験を実現する可能性を持つ。そして、点字や触図の多様な在り方を探ることは、視覚と触覚、それぞれに依拠する感覚の違いを活かした新たな「さわる」体験の手がかりとなるだろう。





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